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横須賀

先日、田中さんと横須賀で飲んできた。
田中さんとは、本サイトでも度々登場する「文学の遠吠え」の田中さんだ。
ちなみに田中さんとは、ニフティサーブ(というパソコン通信サービスが昔はあったのですよ。インターネットとか普及する前の時代のお話デス)の文学フォーラム時代からの知り合いで、当時私は大学2年とか。気が付けば軽く13年以上前だっていうのだから恐ろしい。

ニフティのフォーラムというのがどういうモノだったかというのを、今の人にわかってもらうのは少し難しいかもしれない。一番近いのはmixiのコミュニティだろうか? ニフティが用意した様々なテーマ(私はたまたま文学しかやっていなかったが、他にも、野球だとか映画だとか音楽だとか競馬だとか様々なテーマが存在した)に分かれたコミュニティに、サービス利用者はまず入会登録を行う。
で、その中でさらに目的別に細分化されたスレッド(ニフティでは「会議室」と言った)があり、主にそれらに書き込んだり読んだりすることによってコミュニティが運用されてゆく。
会議室には番号が振られていて、確か覚えている限りでは・・1番が自己紹介。4番が長編創作、5番が実験創作、8番が日記(これは結構後半に出来た)、9番が創作に対する感想、10番が確か「壁」という一言つぶやきの部屋。あと期間限定で音楽バトルとか、小難しい論理を語るトコとか、短編創作の部屋とか・・あんなに本気でやってたのに意外と覚えていないことに結構ショックだったり。
イメージとしてはmixiのコミュだけど、一番違うのは文章の長さと濃さかなと。ROM(読むだけの人)というのもいるけれども、みんな文章が書きたくて仕方ない人たちなので、量も投稿数もとにかく沢山書く。1つの書き込みがエディタで2〜3画面ぶんスクロールするのが平均でしょうか。入会したての初心者が1画面に満たないような文章書いてると「甘いな」みたいな、そんな嫌な世界でした(笑
そんな状況で、さらに週の半分以上は何かしら書いてるような常連はおそらく30名前後。ゆるやかに世代は交代してゆくけれど、狭い世界で、さらに入会・退会手続きというのもあるのでその期間というのも短くても数ヶ月単位と今よりもかなり緩やか。
そういう世界にどっぷり浸かっていると常連(当時は「アクティブ」と言った)たちというのは、互いにもの凄く意識するようになってくる。毎日のように脳味噌を回線に直結させたように互いに大量の文章を垂れ流しているので、直接面識はなくても「この人結構好き」とか「コイツなんか気に食わない」とか、まあ言ってしまうと「敵か味方か(笑」みたいなそういう状況になってくるのだ。
さらにそうした状況を加速させるかのように、メール(mixiのメッセージみたいなもの。しかも妄想を刺激する開封通知機能付)、チャット、ホームパーティ・パティオ(仲間内メンバのみで利用できるクローズド・サークル。まあ、会議室がオモテだとすると、こちらは給湯室とか女子トイレとか喫煙室みたいなイメージですね。ハイ)といったサービスががっちりサイドを固めている。
あと極めつけは「公式オフ会」と呼ばれる、普段ネットでしか顔を合わせないメンツがリアルで一同に会してしまうという恐ろしい行事です。半年に1度くらい、ニフティから任命されたシスオペ・サブシスと呼ばれる管理者が主催するので、信頼性も抜群。主に東京で開催されるのですが、遠方から遙々駆けつける方も結構いましたよ。
そんな世界で、私も田中さんも結構な「アクティブ」をやっておったワケです。そして、オフ会なんかを重ねるうちに意気投合し、気が付けば同じ「此岸草陣営」の仲間内に。「此岸草」が何なのかというのは、どうか聞かないで欲しい。若気の至りというのは誰にでもあるのだから。
それ以来、田中さんとは(歳もひとまわりくらい離れているし、私がネットから離れていた数年間のブランクもあるのだけれど)良き友人であり、飲み友達でもあるのだった。
と、細かく当時のニフティの状況を語ってみたりしたのは、これから書く話のバックボーンとして情報の足しになるかなと思って。まあ単純な懐かしさもありますが。

そんな訳で、某日16時に横須賀中央改札前で田中さん(骨折により右手使用不可状態)と待ち合わせる。なぜ骨折してるかは「遠吠日記」をご覧下さいませ。で、挨拶もそこそこに大衆居酒屋に乗り込む。平日の夕方から酒をかっ喰らってるおっちゃん達がいる、ユートピアみたいなトコロだ。

「凄いぞ。ラピュタは本当にあったんだ!」

と内心叫びつつ、まずは一般のオトナのように近況報告なんかを肴に酌み交わす。が、いかんせん盛り上がらない(笑
リアルで会うのは久々で暖まるまで時間が掛かるというのもあるし、脳味噌直結レベルでの友人ではあるが、フツーの社会人同士としての接点はあまりないのだ。
で、マグロぶつやらホタルイカやらをビールで流し込み、麦焼酎お湯割り梅入りとかやり始める頃に、話題も携帯小説とか、私が一時実験でやってた携帯ブログ(数行顔文字満載の今風)とか、秋葉連続殺傷事件犯にとってのネットと現実とかになり、ようやくエンジンが掛かってくる。
んで、ふと気が付くと周りは満席になり、互いの声も聞きにくくなるような大盛況っぷりになってきたので、鯨の竜田揚げを〆に田中さんの家に場所替えすることにする。

電車に乗り、さらに南下すること数駅。私がピュアピュアでキュアキュアな小学生の頃、微妙に通ったことのある某駅に到着する。ちょっといろいろ懐かしい。
家に行く前に、田中さんが一軒寄ってみたい店があるという。しかも、酔った勢いじゃないと行けないような店だという。
いったいどんなけしからん店なんだと、期待・・じゃなくて気を引き締めて着いて行くと、昼間はカフェで夜は洋風居酒屋(しかも小綺麗な店内と、丁寧に書かれた手書き風メニューに好感が持てるようなお店だ)というきわめてまっとうなお店だった。

「腐ってやがる(自分が)・・早すぎたんだ(飲み始めた時間が)」

と、内心反省しつつ、小西真奈美風の店員さんにジントニックとカプレーゼを(さっきまで梅お湯割り飲んでた癖に)頼む。
ぶっちゃけ、ここでは何を話したかよく覚えていない。田中さんのiPhoneがなかなか繋がらなかったことくらいか。べ、べつに小西真奈美風の店員さんが気になって、ろくに話聞いてなかったワケじゃないからね!←なぜか今更のツンデレ風味
あー、いまなんとなく思い出したけどオレ様DBとかAppストアとかの話をしてたような気がする。

んで、小西真奈美風の店員さん(大事なことなので、本記事3回目デス)に後ろ髪を引かれつつも、1杯だけ飲んで店を後にする。コンビニで酒とつまみを買い込み、いざ田中家へ。てゆーか、サシ飲みなのにJINROのボトルとかフツーに買ってる自分にちょっと楽しくなってくる。

「卍解!(=何かを解放した、ダメな状態)」

道すがら、やけに丁寧に家までの道のりを説明する田中先輩。よくよく聞いてみると「帰りはオレ様は送れないから、今のうちに自分で道順をしっかり覚えておくように。よろぴこ」ということらしい。センセーイ、こっちは卍解どころか、始解が始まってますよ!
そんなワケで少しだけ酔いが覚め、「トンネルと坂道と車道の一本裏の狭い歩道の盛り合わせ、少し湿った夜の空気と新宿とは違うまっとうな夜空風味」を脳内に正確にインプットすることに努める。

そして田中家。自慢の書棚を眺めながら、さらに酒を酌み交わす。
話題もかなりディープになり相当面白い話をしていたハズなのだが、その時は相当に酔っ払ってたし、しかもいかんせん今この文章を書いてる自分の状況も、夜中の3時半で缶ビール3本目というアレな状況なので、さっぱり思い出せないんデスwww
ぃゃーニフティの前フリとかいらなかったんじゃね?コレ、みたいな。

「僕の本気、見せてあげるよ(by鏡音レンの暴走)」

ようは、今言われている「ネットとリアルの問題」みたいなことは、我々は10年以上前にとっくに通り過ぎてきたというのが共通認識だ。
そして、それは単純な二項対立ではないというのが共通の結論。ネットとリアルというのは確かに違う次元に存在するものだけれども、互いが互いに引き摺られる関係でもある。
ネットでの出来事(主に他者との関係性)というのは、確実にリアルな私に影響を及ぼしている。そして、重力の、しがらみの、認めたくないオノレという楔から解き放たれて自由でありたい(あり得る)筈のネットの世界での有り様も、ネットから影響を受けたリアルな私によって確実に変質している。
世はインターネットとなり匿名性と分母数の多さでネットとリアル両者の距離はさらに遠ざかったように見えるけれど、所詮それは他者から「そう見える」だけで、逆にそれはオノレの中では分かちがたい程に結びついてしまっているのではないかと。
秋葉連続殺傷犯の彼は、過疎化した(そういう場所を敢えて選んだという話もある)ネットの片隅でオノレと異なるオノレを演じ続けることにより、自家中毒に陥り、結果的にさらに深い闇に堕ちていったのではないか。

蛸壺的なオンラインの閉鎖空間で、人はどのように急速に親密になり、急速に行き詰まり、そして一度ピークを過ぎると後は精神的な共食いを始めるまでに幾らも掛からないということを、我々は(身をもって、切ないほどに、そして哀しいほどに)知っている。
だから、我々は(少なくとも私は)ネットで深く語り合うこと辞めた。深く呟くことはあっても、それはパフォーマンスの一環であり、他者とのディープな関係性・対話は求めていない。
ネットは無から金銀財宝を生み出す錬金術装置ではないし、リアルと切り離されたリアルとは違う自分を生きることのできる夢の世界でもない。
アタリマエと言えば実にアタリマエだが、それがネットに熱狂し、狂奔し、奔走し、翻弄された上での自分の結論である。
しかし、それでも、それだからこそ、今でも信じていることがある。
ネットワークが運び繋ぐのは、データだけではない、と。

「嗚呼、僕の歌声が、闇を照らす光でありますように(by鏡音レンの暴走)」

村上春樹はエルサレム賞の受賞を「ORの発想(二者択一)」ではなく、「ANDの発想(対立する二項を、より上位の発想・概念で一度に解決する)」で見事にやってのけた、こんなことを世界を舞台にやってのける日本人は春樹くらいしかいねーよ、みたいな話もしつつそろそろ収束する方向にゆかなければならない時間がやってくる。
ちなみに全文訳は→ http://www.47news.jp/47topics/e/93925.php
ちなみに、いまこの文章を書いている私も、睡眠時間的に収束に向けてやっていかないといかない状況(=4時半過ぎ)に陥っておりますが何か。
んで、田中さんの奥様に「10年後にまた来ます」と言って(前回お会いしたのは10年くらい前だった)泥酔しつつもクールにおいとまする。

「あなただけが使えるテクニックで、とかちつくちて、とかちつくちて!(ニコニコ動画流星群.ほんこーんVer)」

横須賀の街並みは、私のよく知っている逗子や葉山あたりの街並みとよく似ている。
iPodで大きめの音で音楽を聴きながら、ゆっくりと徒歩でトンネルを抜ける。見えない自由が欲しくて、見えない銃を撃ちまくる的な、そんな少し古いの歌のフレーズがふと浮かび、意味もなくトンネルの壁を小突いてみる。
酔っているせいか、軽く小突いただけの右拳が予想以上に痛くて、思わず一人で笑ってしまう。
そして、トンネルを抜けた先にある自動販売機で缶コーヒーを買って、ハチワンのようにゴキュゴキュと飲む(珈琲伝説でないのが非常に残念だが)。
iPodから流れるのは、景山ヒロノブだったか、ほんこーんか、それとも棒人間か。ただ、とにかく喉を焼く熱いコーヒーと、頬を撫でるひんやりとした夜気と、深く暗い空がひどく気持ちよかった。

「君を知ったその日から、僕の地獄に音楽は絶えない(by創聖のアクエリオン)」

そして京急に乗り、品川で山手線に乗り換えるはずが、軽く泉岳寺まで寝過ごしてみる。
23時過ぎの過密乗車の山手線車内ではiPodのボリュームをさらに上げ、時折途中で買ったミネラルウォーターをゴキュゴキュと飲む。
新宿の薄ら明るく煙った空を見ると、汚いなぁと思いつつも「帰ってきた」と安堵してしまうのは何故なんだろう?
「『新宿には空がない・・』て、思うじゃ〜ん?」
唐突に誰かの声で、そんな台詞が浮かぶ。

事務所に寄り、急遽入った仕事を軽くやっつけるつもりが意外に苦戦し、結局終わったのは3時前だった。
帰りのタクシーから見上げた新宿の空は、やっぱり極めてインチキくさく、どうしようもなく下品だった。
それでも、運転手と会話するために片耳だけ付けたiPodから流れる音楽を聴きながら見るその空は、なんだかんだ言いつつ実はそんなに嫌いじゃないな、と思ったのだった。

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